初乳に含有される様々な生理活性物質の中枢神経系における標的領域やその機能の発現に対する影響を追求するために、ラット初乳に対する単クローン抗体の作製を行った。 Wistar系ラットを交配し、分娩翌日の泌乳1日目または2日目のラットから乳仔を離乳させた。6時間離乳の後、母親はネンブタール麻酔し、オキシトシンの腹腔内投与後、乳頭から乳汁を採取した。乳汁は脱脂の後、60000×g、4℃、60分間、超遠心分離することによりカゼイン分画を除去し、milk infranatant(MI)を採取し、免疫抗原とした。BALBCマウスに免疫抗原液を完全アジュバンド、不完全アジュバンド、抗原液のみ、というように数回免疫した後、免疫マウス抗体価を測定し、抗体価の上昇したマウスの脾臓組織を無菌的に採取し、単離された脾臓細胞とミエローマ細胞(NS-1)をポリエチレングリコールを用い細胞融合した。その後、ELISA法による抗体価を確認しながら、単クローン抗体産生細胞(hybridoma)を作出した。この結果、約10種類の単クローン抗体産生細胞が得られた。これらの細胞の培養上清を一次抗体して用い、泌乳2日目のラット乳腺凍結切片の免疫組織化学を行ったところ、得られた抗体産生細胞すべてにおいて、腺胞腔以外の乳腺組織での反応は認められなかった。これは、得られた抗体が、乳腺組織を構成するタンパクに対する抗体ではないことを示している。さらに、ウエスタンブロット法を用い、抗体認識抗原の分子量を調べたところ、約50kDaを認識する抗体グループと約100kDaを認識する抗体グループの2種類に大別された。 今後は、この抗体の特異性を生化学的に調べ、認識抗原の特徴を調べる。さらに、神経系におけるこれら抗体の認識抗原の局在を確認し、行動学的意義についても検討する予定である。
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