慢性的に大腿動静脈カニューレ、心電図、腎交感神経活動記録電極を装着した意識下ラットに、hypocapnic(Hypo)、isocappnic(Iso)、hypercapnic(Hyper)の3種類の異なる低酸素暴露を行った。低酸素暴露前、暴露中のR-R間隔および収縮期血圧変動を最大エントロピー法にて解析し、各周波数帯域のパワーの変化を調べた。さらに、副交感神経の効果を調べるため、アトロビン投与後に同様の実験を行った。また、化学受容器、圧受容器の効果を調べるため、これらの求心路を除神経(SAD)したラットを用いて、同様の実験を行った。 R-R間隔変動におけるVLF、LF、HFパワーは、Hypoにおいていずれも低下、Isoでは有意な変化はなく、Hyperではいずれも増加した。Hypoにおける変化は、アトロピン投与により抑制され、Hyperによる変化は、アトロピン投与、SADにより消失した。このことより、低酸素環境下のR-R間隔変動には、副交感神経活動が支配的に影響すると考えられた。また、その変化は、SADでも抑制されたことより、副交感神経活動の変化は末梢化学受容器を介すると考えられた。 収縮期血圧変動に関しては、全てのパワーは、いずれの暴露においても、有意に変化しなかったが、アトロピン投与後に、LFパワーはIsoおよびHyperにおいて増加した。化学受容器刺激時には、交感神経と副交感神経が同時に興奮することから、LFパワーの変化が副文感神経活動によりマスクされると考えられた。アトロピン投与後、HFパワーは全ての暴露において増加した。HFパワーは、自律神経活動の影響をを受けないとされるが、低酸素環境下では、循環動態の変化を経て、2次的に副文感神経活動の影響を受けると考えられた。
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