[目的] 月経周期がエネルギー代謝に影響を及ぼすことが知られている。本研究では、これまでに月経周期の長さと体脂肪率との間に正の相関が在ること、安静代謝および食事誘発性体熱産生が卵胞期に比べて黄体期で大きいことなどを明らかにしてきた。ところで、1日のエネルギー消費量を決定するものとして、安静代謝および食事誘発性体熱産生以外の要素として活動時のエネルギー消費量があり、1日のうちでかなりのウエイトを占めている。今年度本研究では、運動によるエネルギー消費量、すなわち運動中および運動後のエネルギー消費量が卵胞期と黄体期で異なるかを検討した。 [方法] 健康で月経周期が安定している19〜20歳の健常女性7名を被験者とした。実験の前日より被験者の食事を統一し、当日の早朝空腹時において最大酸素摂取量の80%程度の自転車漕ぎ運動を60分間実施させた。卵胞期および黄体期にそれぞれ運動前、運動中および運動後6時間にわたって、酸素消費量、二酸化炭素排出量および尿中窒素排泄量を測定し、これらを用いて運動中のエネルギー消費量、運動後の総エネルギー消費量、運動による運動後のエネルギー増加量を算出した。また、脂質酸化率の指標として、呼吸商を算出した。 [結果] 運動中のエネルギー消費量には卵胞期と黄体期で有意差を認めなかった。運動後の総エネルギー消費量、運動による運動後のエネルギー増加量は卵胞期に比べて黄体期で有意に大きかった(p<0.05)。安静時および運動中の呼吸商には卵胞期と黄体期で有意差を認めなかったが、運動後の呼吸商は卵胞期に比べて黄体期で有意に低くかった(p<0.05)。 [結論] 以上の結果から、黄体期は卵胞期に比べて運動後のエネルギー増加量と脂質酸化率が大きく、減量時の運動は黄体期でより効果的に作用する可能性が示唆された。
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