研究概要 |
本研究は老化ラットで排尿機能が低下しているかどうか、低下しているとすればどのような原因で低下しているかを明らかにすることを目的とする。研究代表者らはこれまでに膀胱支配の骨盤神経の感覚機能は老化ラットでもよく保たれているが、骨盤神経の遠心性の膀胱収縮機能は低下していることを報告してきた。骨盤神経には無髄線維と有髄線維が含まれており、ラットでは無髄線維の多くは遠心性神経、有髄線維の多くは求心性神経と考えられている。そこで本年度は、骨盤神経に含まれる無髄線維と有髄線維の伝導機能と形態が、老化ラットでどのように変化しているのかを調べた。 実験には、成熟群として3-9カ月齢、老化群として30-37カ月齢のWistar系雌性ラットを用いた。ラットをウレタンで麻酔し、顕微鏡下で両側の骨盤神経を切断し、その切断中枢端に0.1ms,0.5-15Vで電気刺激を加えた際に、切断末梢端に誘発される活動電位を記録した。活動電位の潜時と電極間距離から各神経線維の最大伝導速度を算出した。骨盤神経を摘出し固定包埋したのち超薄切片を作成し、電子顕微鏡写真を撮影して1本の骨盤神経に含まれる有髄線維と無髄線維の本数および直径を計測した。 有髄線維については、最大伝導速度(成熟群9.7±1.1m/s、老化群11.0±1.5m/s)、線維数(662±27、老化群で625±56)、直径分布のいずれにも有意差は認められなかった。無髄線維の最大伝導速度(成熟群、老化群ともに1.5±0.1m/s)には差は認められなかったが、線維数(成熟群4133±114、老化群3113±456)は有意に減少しており、特に0.7μm以下の細い線維が減少することが分かった。以上の結果から、加齢に伴い骨盤神経の有髄線維は伝導機能、populationともによく維持されているが、無髄線維の中でも細い線維の本数が減少していることが明らかとなった。太い無髄線維は伝導機能も数も良く維持されていることが分かった。
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