研究概要 |
生後4-6週齢のWistar系雄性ラットより作成した海馬スライスを用い、CAl野錐体細胞より細胞内記録を行った。1.内在性物質であるセロトニン(5-HT)を投与すると3種類の異なる反応が記録細胞に誘発された。(1)膜電位の過分極、(2)自発性シナプス後電位頻度の増加(および付随した発火頻度の増加)、(3)膜電位の脱分極、の3つの反応が投与後時間経過をおって観察された。2.膜電位の過分極反応は5-HT受容体サブタイプのうち5-HT_<1A>受容体を介することが知られており、5-HT(30μM)により7.4±0.6mV(n=4)の過分極が得られた。3.2番目に得られるシナプス後電位頻度の増加反応は5-HT_3受容体拮抗薬のLY278,584により拮抗された。また、5-HT_3受容体に選択的なアゴニストの2-Me-5VHTによっても同様の反応が誘発された。このことから5-HTによる自発性シナプス後電位頻度の増加反応は5-HT_3受容体を介していることが明らかとなった。4.反復電撃痙攣処置(ECS)を行ったラットについて5-HTの作用を比較検討した。5。5-HT投与に最初に観察される過分極反応がECS処置をしたラットの海馬CAl野錐体細胞において増大していた。5-HT(30μM)により誘発される過分極は10.0±0.8mV(n=4)で対照のラットよりも有意に大きかった。5-HT_<1A>受容体に選択的なアゴニストの8-OH-DPAT(30μM)による反応もECS処置ラットで7.3±1.3mV(n=3)と対照群の3.0±0.04(n=3)と比較し有意に増大していた。6.このことから電撃痙攣処置療法のうつ病治療効果に5-HT_<1A>受容体機能の亢進が関与していることが示唆された。
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