1. 生後4-6週齢のWistar系雄性ラットより作成した海馬スライスを用い、CAl野錐体細胞より細胞内記録を行った。内在性神経伝達物質であるセロトニン(5-HT)の投与によって誘発される5-HT_3受容体を介する自発性シナプス後電位頻度の増加(および付随した発火頻度の増加)反応はグルタミン酸受容体アンタゴニストのCNQX(10μM)によって減弱した。また同反応はCAl野へのグルタミン酸性興奮性入力線維であるシェーファー側枝を切断した海馬スライスにおいて減弱した。これらのことから5-HT_3受容体刺激によって増加するシナプス後電位は主にグルタミン酸によって引き起こされたものと考えられた。 2. スライスパッチクランプ法による検討でも5-HTは電流(あるいは電位)固定条件下で自発性シナプス後電位(あるいは電流)を増加する作用を示した。5-HT_3受容体に選択的なアゴニストのmCPBG(10μM)によってもシナプス後電位頻度の増加が認められた。 3. 反復電撃痙攣ショック(ECS)処置を行ったラットについて5-HTによるシナプス後電位頻度増加作用を対照(ECS無処置)と比較検討した。ECS無処置ラットでは5-HT投与前の1分間当たりの自発性シナプス後電位頻度を100としたとき5-HTによる自発性シナプス後電位頻度増加は投与2〜3分後に最大となり、その時の頻度は130±8(n=13)であった。一方、反復ECS処置を行ったラットより作成した海馬では5-HTによるシナプス後電位頻度の増加は216±22(n=13)であった。この結果は反復ECS処置により5-HT_3受容体を介した反応が海馬において増大していることを示している。以上のことから電撃痙攣処置療法のうつ病治療効果に5-HT_3受容体機能の亢進も関与していることが示唆された。
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