平成9年度は以下のことを明らかにした。(1)血小板を用いてSykの会合分子としてFakを同定し、Actin細胞骨格に移行したSykは細胞骨格の再重合時にFakと会合することを明らかにした。その機構について明らかにする目的で、1997年のFEBS Special Meetingにて「血液細胞におけるSykの生理的機能の解析」に関し、他のチロシンキナーゼとの相互作用やチロシンリン酸化の意義についてレビューを受けた。その結果、両者の会合がSykチロシンリン酸化の程度に応ずることが明らかとなったがSykが直接Fakを基質としてリン酸化するか否かは否定的であり、この過程におけるSrcキナーゼの役割については不明である。 (2)細胞骨格を構成する他の分子について解析したところ、膜の裏打ち蛋白質のひとつであるPaxillinが凝集させたSykによりチロシンリン酸化されることを見出し、インテグリンからのシグナル伝達経路において細胞骨格に作用するSykの役割を明らかにした。正常細胞におけるPaxillinの機能はまだ不明な点が多く、私は血球細胞に加えて胎児臍帯内皮細胞や皮膚角化細胞といった正常組織の初代培養細胞を用いてその解析を行った。その結果これらの細胞ではin vitroでの分化過程においてそれぞれ発現量が変化し、チロシンリン酸化を受けていることや3つのisoformが存在していることが明らかとなった。チロシンキナーゼとこれらの関わりについては今後の研究対象とする予定である。
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