研究概要 |
我々は血球系、免疫系に発現するチロシンキナーゼSykを同定して以来、その機能解析を続けてきた。その結果、SykはLynと共に免疫担当細胞の増殖、分化、細胞死の早期シグナル伝達に必須分子であることを明らかにすることができた。現在、これらのチロシンキナーゼと共に、チロシンホスファターゼ群(CD45,SHP-1)がBリンパ球の分化機構において密接に関与していると推測されている。そこでわれわれはニワトリB細胞株(DT40)から遺伝子相同組換えによる遺伝子ノックアウト法を用いてこれらのチロシンホスファターゼ欠損変異株の樹立した。CD45欠損細胞およびSHP-1欠損細胞におけるSykおよびLynチロシンキナーゼの酵素活性、チロシンリン酸化状態を野性株と比較検討した結果、チロシンホスファターゼによるチロシンキナーゼの制御機構を明らかすることができた。さらにSHIPの欠損細胞を樹立することにより、SHP-1とSHIPとの機能的差違が明らかとなった。現在、SHP-1の下流に位置する標的シグナル伝達分子の検索、同定を生化学的、分子生物学的手法を用いて行っている。これらの変異株を解析することによりSykや他のSrcファミリーチロシンキナーゼとの相互関係および免疫系の早期情報伝達系の全貌が解明されることが期待される。
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