本年度は、1)内皮細胞増殖因子VEGFによる低分子量Gタンパク質ファミリーをRho/Rac/CDC42の活性化の検討、2)ゲルゾリンに相互作用するタンパク質(Gelsolin Interactine Protein=GIP)をコードするcDNAのクローニングおよび塩基配列の解析を計画していたが、我々の研究室で、Fas刺激をはじめとする様々な細胞死のシグナルによるヒトT細胞白血病細胞株Jurkatのアポトーシスをゲルゾリンが抑制すること見い出し、また、独立にハーバード大学医学部の研究室から、ゲルゾリンがアポトーシスの際の細胞形態変化において重要な役割を担っているという報告がなされた。これまで、アクチン調節タンパク質として解析されてきたゲルゾリンがアポトーシシスという普遍的な生物学的現象と密接に関わることが明らかになり、これらの分子機構解明が早急な研究課題として非常に重要であると考えられた。したがって、今回、上記の本年度計画2)を優先した。 1)ゲルゾリンに相互作用するタンパク質(Gelsolin Interacting Protein=GIP)のcDNAクローニング a)酵母の転写因子であるGal4のDNA結合領域を有する発現ベクターに翻訳フレームが一致するようにゲルゾリンcDNAを組み、選別用酵母細胞株に導入した。さらにMouse brain cDNAライブラリー5x105クローンをトランスフェクショシ、選択培地で生存する酵母クローンを得てcDNA(MB♯3およびMB♯10)を回収した。ジデオキシ法により、それらの塩基配列を決定したが、いづれの場合にもオープンリーディングフレームは短いアミノ酸しかコードしておらず、GIPの候補cDNAとは考え難く以下に記す方法に変更した。 2)ゲルゾリンに相互作用するタンパク質(Gelsolin Interacting Protein=GIP)の検索 ゲルゾリンのN末端約半分G1-3およびC末端約半分G4-6cDNAをGSTタグを有する大腸菌での発現ベクターに組み込み発現して、グルタチオン・カラムを用いたアフィニティークロマトグラフィーにより精製した。これらのフュージョン・タンパク質をプローブに用いて、Far-westem blottingによりマウス線維芽細胞NIH/3T3の細胞抽出液を解析したところ解析したところ、分子量約72kDaのゲルゾリンのN末端約半分G1-3に特異的に結合するタンパク質を見い出した。また、GSTフェージョン・タンパク質を用いてPull-doun assayを行ったところ、全長のゲルゾリンおよびN末端約半分G1-3に結合する分子量約210kDaのタンパク質を見い出した。今後、これらのタンパク質のcDNAクローニングを行い、特徴的な配列、また既知の遺伝子であるかどうかについて検索する。さらに、それらの抗血清あるいはモノクローナル抗体を作成し、免疫組織学的手法により細胞内局在などを検討してアポトーシスにおける役割について分子レベルで解析していく予定である。
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