研究の目的:メラニン生合成系酵素遺伝子の発現を制御している転写因子MITFはメラノサイトや網膜色素上皮細胞(RPE)等の分化も制御している。本研究ではMITFの複数のisoformによる細胞特異的な転写制御機構を解析し、報告した。 1:MITFのN末端領域の機能解析 まず、MITFの遺伝子構造を明らかにし、3種類のMITF isoform(A型、H型、M型)のプロモーター領域を単離した。また、M型MITFの機能解析の結果、C末端側領域を人為的に欠失させたMITFはチロシナーゼ関連タンパク質2(TRP-2)遺伝子のプロモーターを活性化する事を報告した。さらにHMG boxを持つ転写因子がMITFと協調的に作用してTRP-2プロモーターを活性化する事を見出した。また、Yeastを用いた実験系において各isoformに特異的なN末端領域の機能を比較したところ、A型MITFのN末端領域に弱い転写活性化能を見出した。 2:ヒト由来の培養網膜色素上皮細胞を用いたMITFの機能解析 RPEで発現しているA型MITFはチロシナーゼ、TRP-1といったメラニン生合成系酵素遺伝子のプロモーターを活性化する。しかし、H型MITFはそれらのプロモーターに対する転写活性化能が弱く、さらにA型の転写活性化能を抑制する事を明らかにした。また、Mitf変異マウスには網膜色素変性を発症する系統がある事が知られていたが、最近RPE特異的に発現しているCRALBPやRPE65といった遺伝子が網膜色素変性の原因遺伝子である事が報告された。この事からMITFがCRALBPやRPE65のRPE特異的な発現を制御しているかどうかを検証した。現在までにMITFはこれらの遺伝子を単独では活性化しない事を明らかにしている。
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