我々は、ラット肝臓から種々のカラムを使用し、低分子型である25KのリゾホスホリパーゼIとII、および高分子型である60Kのリゾホスホリパーゼ/トランスアシラーゼ(リゾホスホリパーゼIII)を精製し、均一な標品を得た。さらに抗体を作成し、リゾホスホリパーゼI、IIおよびIIIのcDNAを得た。リゾホスホリパーゼIとIIは65%の相同性を示した。ともにセリンエステラーゼに特徴的なGXSXG配列を含んでいた。今回、リゾホスホリパーゼIIのアミノ酸変異酵素を作成しその酵素活性を測定した。Gly-120、Ser-122およびGly-124とも酵素活性に重要であり、活性中心はGXSXGであることが推測された。また、Ser-122、ASp-176およびHis-210によりcatalytic triadが形成されることも推測された。高分子型である60Kのリゾホスホリパーゼ/トランスアシラーゼは1位にアシル基を有するリゾホスファチジルコリンのみでなく、2位にアシル基を有するリゾホスファチジルコリンも基質とし、2位のアラキドン酸を1位にアシル基転移し、1、2-ジアラキドノイルホスファチジルコリンを生成することが確認された。ホスファチジルコリンの1位のアラキドン酸はオピオイド受容体のリガンドであるアナンダミド作成に重要である事が報告されており、本酵素の重要性が再認識されるようみなってきた。また、高分子型である60Kのリゾホスホリパーゼ/トランスアシラーゼのN末端側は酵素活性を有すると考えられ、大腸菌のアスパラギナーゼIと相同性を示し、次いてロイシンジパ-よう配列、そしてC末端側には2つのankyrin repeat構造を有していた。 このことは60Kのリゾホスホリパーゼ/トランスアシラーゼが結合蛋白質を有しているとを示唆するが、結合蛋白質の精製が困難であったため、現在YeastのYwo-hybrid systemを用いてスクリーニング中である。
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