研究概要 |
アルツハイマー病などの神経変性疾患において脳への鉄・銅などの沈着が観察される。金属イオン代謝の異常、それらが引き起こす酸化ストレスによる細胞傷害の疾患への関わりを解明する手がかりとして、その代謝機構を出芽酵母により解析した。ヒトと出芽酵母間の代謝機構の保存は関連遺伝子間のホモロジーにより強く示唆されていた。そのうち、細胞内メンブレン・コンパートメントに存在するP-type ATPaseのfamilyであり、細胞内メンブレン・コンパートメントに存在する銅トランスポーターをコードする遺伝子CCC2はWilson病・Menkes病原因遺伝子と高い相同性をもつ。正常なMenkes病原因遺伝子を出芽酵母のccc2変異株で発現するとFet3への銅の配位がおこりFet3のOxidase活性が回復した。したがって、CCC2遺伝子が単に相同性を持つだけでなく、機能的にもWilson病・Menkes病原因遺伝子と同じ働きをすることが確認された。また、Ctr1からCcc2に銅を運ぶ銅シャペロンAtx1とCcc2はともに銅の細胞内代謝に役割をもつが最終標的が鉄の取込みであるため、どちらもAftl転写因子の制御下にあり、その遺伝子制御領域にAftl結合コンセンサス配列の存在が認められた。銅代謝の制御因子としてはMAC1遺伝子が知られていたがその機能は明らかではなかった。CTR1,FRE1遺伝子制御領域を用いたレポーター・アッセイでMac1の標的配列を決定し、さらにin vitro translation systemでMac1を合成し、その標的配列DNAへの結合を確認することにより、Mac1が転写因子であると結論した。
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