ヘルパーT(Th)細胞は、サイトカインの産生様式および担う免役反応により、2種類のサブセットに分けられる。Th1はIL-2、IFN-γなどによる細胞性免役、Th2はIL-4、IL-10などによる液性免役を担っている。自己免役分野ではそれが主にどちらのサブセットにより引き起こされているかを調べ、さらにはそのサブレットを抑えることにより治療法の開発が進められている。私たち以前、代表的な自己免役疾患であるバセドウ病がI型アレルギーのなかで最も頻度の高い疾患である(日本人の約20%)アレルギー性鼻炎後に発症・増悪することを明らかにした。I型アレルギーではTh2優位となり、IgE産生や好酸球の活性化をおこすことが分かっており、これらのサイトカインがバセドウ病の原因IgG抗体であるTSHレセプター抗体も産生し、バセドウ病が増悪するのではないかと推定した。これを証明するために本年度は、バセドウ病で本当にTh2が優位になっているかどうかを検討した。予想通りIL-4陽性細胞(Th2)は、バセドウ病患者の甲状腺内リンパ球において末梢血リンパ球に比べて有意に増加していた。しかしながらIFN-γ陽性細胞(Th1)も甲状腺内リンパ球において末梢血リンパ球に比べて有意に増加していた。また、バセドウ病患者の末梢血においてもTh2が分泌するサイトカインであるIL-5のみならず、Th1を誘導するサイトカインであるIL-12も健常者に比べ増加していることも明らかになった。以上の研究により、バセドウ病においてはTh2が活性化していおり、I型アレルギーに限らず、Th2を活性化させるような状況はバセドウ病を発症・増悪させるものと考えられる。しかし、ヒトにおける自己免役疾患ではTh2が活性化しているからといって、Th1が必ずしも抑制されてはいないことも明らかになった。
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