研究概要 |
平成9年度は、乳癌(T47-D、MCF-7)及び子宮内膜癌(RL95-2、HEC-1A,HEC-1B、KLE、Ishikawa)細胞株を用いたin vitroの系において、17β-hydroxysteroid dehydrogenase (17β-HSD)のisozymeの発現パターンとその調節因子について検索した。その主な結果は下記の如くである。 1. breast cancer cellsでは、17β-HSD type 1によるestradiol合成能が主に発現していた。 2. 17β-HSD type 1活性は、retinoic acid、progesterone、IL-6によってmRNA levelを介して制御されていた。 3. endometrial cancer cellsでは、17β-HSD type 2によるestradiolの分解能が中心であったが、その発現量はcell lineによっておおきなバリエーションがあった。 4. 17β-HSD type 2活性は、retinoic acid とkeratinocyte growth factorによってmRNA levelを介して制御されていた。 17β-HSDの発現パターンは乳癌と子宮内膜癌では大きく異なっており、性ステロイド依存性腫瘍におけるestradiolの局所的役割について考えるうえで大変興味深い所見と思われた。 平成10年度は、乳癌及び子宮内膜癌病理組織標本を用いて17β-HSD isozymeの組織内局在を明らかにするとともに、各症例における腫瘍組織内estradiol値、P450aromatase等他のステロイド合成酵素の発現パターン、estrogen及びprogesterone receptorの発現、臨床的予後等と比較し、癌化におけるestradiolの局所的役割について総合的に解析する。更にretinoic acid等種々の17β-HSD調節因子についても、腫瘍組織における発現について検索する予定である。
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