食堂、胃、小腸、大腸の胃腸管間質腫瘍(Gastr ointestinal Str omal Tumor;GIST)72例、及び消化管の平滑筋腫瘍22例、消化管の神経鞘腫2例を用いて、病理組織学的ならびに免疫組織化学的検討を行った。その結果、以前には平滑筋腫瘍(平滑筋腫、平滑筋肉腫、平滑筋芽腫)と診断されていた腫瘍の多くのものが、現在の診断基準ではGISTと分類すべき腫瘍であった。免疫組織化学的には、GISTではビメンチンとCD34が高率に陽性で、筋特異性アクチン、平滑筋特異性アクチン、S-100蛋白は若干の症例で陽性であった。しかし、デスミン、ケラチン、EMA、GFAPは陰性であった。一方、今回の検討で平滑筋腫瘍に再分類された腫瘍は、筋特異性アクチン、平滑筋特異性アクチンが強陽性であるだけでなく、デスミンも陽性であり、平滑筋への分化が明かであった。消化管神経鞘腫は症例数が少ないものの、S-100蛋白が強陽性、CD34や筋原性マーカーが陰性で、免疫組織化学的にもGISTや平滑筋性腫瘍と明らかに異なっていた。いくつかのGISTでは筋原性マーカーであるアクチンが陽性であるが、その発現強度は平滑筋性腫瘍のそれに比べて弱く、デスミン陰性であることを合わせ考えると、真の平滑筋への分化を示していないことが示唆された。また、CD34はGISTの良いマーカーになると考えられた。今後、GISTの組織由来を明らかにするために、各種組織特異的マーカーの発現を検討する他に、遺伝子的検索も重要と考えられる。
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