1.ヘリコバクター・ピロリが報告された当初より、生検組織標本と異なり、手術切除材料の組織標本でヘリコバクター・ピロリを検出するのは困難であると言われ、従来のヘリコバクター・ピロリの検討は全て生検組織標本で行われてきたが、ギムザ染色を行えば手術材料でも十分検索可能であることが今回の検索で明かとなった。 2.ヘリコバクター・ピロリ感染と二次的なリンパろ胞の過形成との関連に関しては、 (1)形成されたリンパろ胞の数は、ヘリコバクター・ピロリ陽性症例で有意に多い。 (2)一次リンパろ胞と二次リンパろ胞の比率が、ヘリコバクター・ピロリ陽性例において有意に上昇している。 (3)若年者ほど(1)(2)の傾向が顕著である。 3.リンパろ胞過形成と他の炎症所見との関連について、 (1)ヘリコバクター・ピロリ感染とよく相関する好中球浸潤量との相関は必ずしも明かでない。 (2)リンパ球浸潤量とよく相関する。 (3)ヘリコバクター・ピロリ感染に伴うリンパろ胞過形成は、幽門腺領域で特に著明であり、胃粘膜萎縮が進行し胃底腺領域の狭くなった症例ほどこの傾向が明かである。 4.以上より、ヘリコバクター・ピロリ感染はリンパろ胞過形成と関連を有し、ろ胞過形成状態の維持のためには抗原への暴露の持続が重要であり、好中球性炎症の持続の関与は少ない、と考えられる。
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