研究概要 |
原発性胆汁性肝硬変(PBC)に特異的な自己抗体であるミトコンドリア抗体(AMA)の対応抗原として、ミトコンドリア内膜に存在するピルビン酸脱水素酵素のE2成分(PDC-E2)が同定されている。これまでの検討で、PBCの胆管上皮にPDC-E2ペプチドの発現亢進があるが、PDC-E2mRNAの発現亢進はみられないことより、PDC-E2ペプチドと交差反応性を示す抗原成分が存在する可能化を指摘し、欧文雑誌Hepatologyに発表した。現在、当初の研究計画に従い、PBCの胆管特異的かつPDC-E2と交差反応性を示す新たな抗原を抽出,解析を遂行中である。現在までのところ、京都大学移植外科教室(田中教授)の協力により、移植時の摘出肝10例(PBC症例7例,原発性硬化性胆管炎3例)を収集できた。これらの肝組織から比重遠心分離法及び抗原抗体反応を用いたマグネットビーズ法により胆管上皮細胞を単離し、そしてmRNAの抽出、次いで逆転写反応によりcDNAサンプルを得ている。今後、Differential Display法によりPBCに特異的なmRNAを検出,ダイレクトシークエンス法により塩基配列を決定,ペプチドの同定を行い、さらには肝組織切片を用いた免疫組織化学的染色とin situ hybridization染色により、肝組織内における同定抗原の動態を検討する予定である。
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