研究概要 |
1.HPVl,HPV63,HPV4,HPV65,及びHPV60型特異的細胞質内封入体(ICB)の本態について、各々の感染疣贅を対象に、詳細な病理組織学的検討及び電子顕微鏡による超微細梼造の面からの検討を加えた。更に得られた所見は異なるHPV間で相互比較され正常細胞とも比較された。これらのICBは表皮構成細胞中、角化細胞にのみ観察されメラノサイトなどにには認められなかった。各ICBとHPV型との病理組織学的特異相関はHPV型特異的細胞変性効果の概念で知られているが、電顕による超微細構造の点でも特異相関があることが明らかになった。また、いずれも表皮細胞の分化(角化)と密な関係があることも解った。つまりこれらのICBは、正常表皮細胞で観察されるトノフィラメント及びケラトヒアリン顆粒と類似した電子密度からなる物質であったが、その形態あるいは量が正常表皮細胞で観察されるものと異なり、また表皮の有棘層下層すなわち表皮細胞の分化の早い時点から既に観察された。更に、これらの正常表皮細胞との相違は各々のHPV型特異的であった(国際研究皮膚科学会、ケルン、1998.5で発表予定)。平成10年度は以上の形態学的観察をもとに、ICBの形成に関与するE4遺伝子蛋白に対する抗体、及び各種のサイトケラチン、インボルクリン、Ki一67など表皮細胞の増殖及び分化マーカーに対する抗体を用いた免疫組織学的検針などを行い、これらの相関について検討を加える予定である。また表皮細胞中のウイルスDNA複製や粒子形成とICBとの関係についても検討を加える。2.現在までHPV60が表皮様嚢腫形成に関連する唯一のHPV型と考えられて来たが、HPV57を病理組織型の異なる嚢腫から分離することに成功した (Br J Demratol, 1998, in press)。現在、HPV57の嚢腫における検出頻度について検討中である。また嚢腫形成における汗管の関与についても、組織標本の三次元再構築など種々の手法を用い、更に詳細な検討を加えて行く。
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