研究概要 |
1.当病院病理部の肺癌症例をWHOの診断基準に則して扁平上皮癌、腺癌、小細胞癌、大細胞癌の4型に分類した。これらの各100例について市販の抗cyclin A、E,cdk2抗体を用いて免疫組織化学染色を行なった。catalytic partner同士であるcylin A-cdk2は小細胞癌、大細胞癌、扁平上皮癌で共発現を認め、且つ扁平上皮癌では分化度の低い症例に高頻度に陽性を認めた。一方、cyclin E-cdk2の共発現は分化度の高い扁平上皮癌に高頻度に発現しており、実際のヒト腫瘍ではG1/S cyclinとして一括されているcyclinの多様な細胞増殖への関与が明らかとなった。 2.ヒト肺癌組織切片より癌細胞の核を抽出し、cyclin A染色の後FACS(florescence-activated cell sorter)analysisを行なった結果、cyclin Aは細胞周期のS期からG2/M期においてのみ発現しており、癌遺伝子のような恒常的な高発現はしていない事を確認した。 4.cyclin Aは肝癌においてB型肝炎ウィルスの挿入によりキメラ蛋白を作ることが報告されているが、肺小細胞癌細胞株を用いたimmunoblottingではcyclin,cdk2の蛋白の再構成は認められなかった。(以上、1997年度、日本病理学会、日本癌学会にて発表、投稿中) 5.cylin Aとcyclin Eは異なった発現様式を示したので、手術材料より抽出した蛋白を用いて、抗cdk2抗体で免疫沈降後cyclin A,cyclin E blottingを行なった。その結果、cyclin A,cyclin Eのcdk2との結合を確認した。しかし、キナーゼアッセイを行なうとcyclin A-cdk2複合体は高い活性を有していたが、cyclin E-cdk2複合体は活性がなかった。よって、cyclin A-cdk2複合体は高い活性により細胞増殖を促進するが、cyclin E-cdk2は不活性型として増殖能の低い細胞に蓄積している可能性が高いと推論した。(1998年度、日本病理学会にて発表予定、投稿中)
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