マウス第6染色体上のmi遺伝子座におけるmi変異はbasic-helix-loop-helix-leucine zipper構造を有する転写因子MITFのbasic domainにおける1アミノ酸の欠失を与えるもので、これによって生じた変異型MITFはDNA結合能を失い、転写因子として機能することが出来ない。mi変異のホモ個体mi/miマウスは自然界に存在する数少ない転写因子異常マウスであり、生後少なくとも3週間生存可能なことからMITFがin vivoで果たす役割を解明する上で有用である。MITFが転写調節に関与している遺伝子を新たにクローニングすることを目的として、野生型マウスの培養マスト細胞(+/+CMC)に比しmi/miマウスの培養マスト細胞(mi/mi CMC)においてmRNAの発現レベルの低下を来した遺伝子クローンが濃縮されたサブトラクションcDNAライブラリーを作製した。このライブラリーを解析した結果、+/+ CMCに比しmi/mi CMCにおいて転写レベルの低下を示す遺伝子を16種単離することに成功した。そのうちの二つはグランザイムBとトリプトファン・脱水素酵素(セロトニン合成律速酵素)をコードする遺伝子であり、mi/mi CMCにおける転写レベルの低下は著明であった。ゲル・シフト法及びルシフェラーゼ法によりこれら二つの遺伝子のプロモーター領域の解析を行った結果、いずれの遺伝子においてもその発現調節にMITFが直接的に関与していることを明らかにした。
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