膿胸リンパ腫発生におけるEBV関連免疫応答不全の解析

1997 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 09770148
• 研究機関: 大阪大学
• 研究代表者: 菅野 祐幸 大阪大学, 医学部, 助手 (40252663)
• キーワード: 悪性リンパ腫 / Epstein-Barr ウィルス / 膿胸 / 免疫学的監視 / HLA / 細胞傷害性 T細胞 / 遺伝子変異

研究概要

1)リンパ腫組織においてEpstein-Barr virus(EBV)の潜伏感染を証明できた16例の膿胸リンパ腫(PAL)症例についてPCR-SSPによるHLA-A alleleのgenotypingを行ったところ、その各alleleの頻度は日本人正常populationとの間に差を認めなかった(manuscript submitted)。
2)我々の樹立したPAL細胞株OPL-1におけるEBNA蛋白の発現を、慢性関節リウマチ患者血清を用いたWestern blot法で確認し、またEBNA4-specificなRT-PCR法にてEBNA4mRNAの発現を認めた。
さらに上記PAL症例のうち新鮮凍結組織が保存されていた6例についてRT-PCR法にてEBNA4mRNAの発現を検討したところ、うち4例でその発現を確認した。さらにリンパ腫組織中のEBV genomeのEBNA4抗原決定基領域をdirect sequencingしたところ、type A genomeを有する4例中3例にCTL誘導を減弱させることが知られている変異を認めた。またtype B genomeを有する3例においてはprototype type Bと同一の塩基配列であったがprototype BそのもののCTL誘導能は弱いことが知られている。また、type Aで変異を認めなかった1例のHLA-A alleleはA11以外であり、これら7例についてはEBNA4抗原決定基に対するCTL誘導は低いレベルにあることが示唆された(manuscript submitted)。同様の変異は東南アジアでendemicなEBV strainにおいても報告されており、PALの発生が日本をはじめ東アジアに偏る理由として、こうしたEBV遺伝子の変異が示唆された。
現在、こうした遺伝子変異のリンパ腫発生上での意義をより厳密に検討するため、EBNA2-6の発現が見られない他のEBV陽性腫瘍中のEBV genome、あるいはPALを発症していない膿胸患者咽頭うがい液中のEBV genomeの同領域を検索する準備を進めている。

研究成果

• [文献書誌] Katsuyuki Aozasa: "Pyothorax-associated lymphoma:A distinctive type of lymphoma strongly associated with Epstein-Barr virus" Advances in Anatomic Pathology. 4(1). 58-63 (1997)
• [文献書誌] Kazuhiro Murakami: "Large-vessel arteritis associated with chronic active Epstein-Barr virus infection" Arthritis and Rheumatism. 41(2). 369-373 (1998)
• [文献書誌] Hiroyuki Kannno: "Mechanism for the development of pyothorax-associated lymphoma" Pathology International. (in press).
• [文献書誌] Hiroyuki Kannno: "Appearance of different clone of Epstein-Barr virus genome in recurrent tumor of pyothorax-associated lymphoma" Leukemia. (in press).
• [文献書誌] Katsuyuki Aozasa: "Gann Monograph on Cancer Research No.45 Epstein-Barr Virus and Human Cancer" Japan Scientific Societies Press and S. Karger AG, 11 (1998)
• [文献書誌] 菅野 祐幸: "別冊・医学のあゆみ 血液疾患-STATE OF ARTSシリーズ state of arts Ver.2" 医歯薬出版 (in press), (1998)