研究概要 |
SCIDmouseへの腫瘍組織、前癌性病変の移植の前段階として、ヒト肺腺癌及び腺癌の前癌性病変と考えられている異型腺腫性過形成(AAH)を対象に、癌抑制遺伝子産物および増殖関連蛋白の発現を免疫組織学的に検討するとともに、遺伝子解析を試みた。 その結果、AAHにおいても3p,9p,17pに存在するmicrosatelliteのinstabilityが観察されたが、その異常の頻度は腺癌に比較すると低率であった。p53遺伝子に関しては、AAHではp53の発現は低く、またp53遺伝子に突然変異を認めた症例はなかった。また異型度別にAAHを三段階に分けて検討すると、異型度が増すにつれて遺伝子異常の頻度が増加すること、さらにAAHの腫瘤径は、異型度が増すにつれて大きくなる傾向があった。これらの結果から、AAHは肺腺癌の前癌性性格を持つ病変であることが窺われた。 腺癌については小型腺癌(直径2cm以下)のものを対象に初期腺癌あるいは上皮内腺癌と見なしうる病変と、明らかな浸潤性増殖を示すものに分けて同様の検討を行った。非浸潤癌では浸潤癌と比較すると、p53,Ki-67の発現とも低率であったが、p21,p27,pRBの発現には一定の傾向がなかった。しかし、p21に関しては腫瘤内の高分化領域や、腫瘍増殖の最も活発な領域での発現が目立った。また高分化腺癌周囲にAAHを伴う症例では、p53およびKi-67の発現はいずれも腺癌領域に明らかに高い発現度を示した。 以上のヒト腫瘍での遺伝子異常、増殖関連淡白の発現を結果をふまえ、来年度のSCID mouse移植組織でこれら因子の異常を比較検討する。
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