本研究計画に基づき研究を行った結果、以下の事柄が明らかとなった。 1. 好酸球特異的CYBB遺伝子発現抑制機構の発見。 未分化型の好酸球性細胞株を用いた一過性レポーター遺伝子発現系により機能的に転写調節領域を解析した結果、CYBB遺伝子転写開始点の上流250塩基の位置にあるGATAコンセンサス配列によりCYBB遺伝子転写活性が著しく抑制される事が明らかとなった。さらに本細胞核抽出液を用いたゲルシフトアッセイ法により、本配列に結合する因子がGATA-3転写因子である事が明らかとなった。すなわちCYBB遺伝子発現レベルが低い十分分化していない好酸球においては、GATA-3が本GATA配列を通してCYBB遺伝子の発現を抑制していると考えられる。GATA-3は好酸球以外のCYBB遺伝子発現細胞種では認められない事から、本機構は好酸球特異的であると考えられる。本研究成果は既に論文発表し、現在さらに詳しい分子機構の解析を行っている。 2. 好酸球特異的CYBB遺伝子発現促進機構の発見。 分化型の好酸球性細胞株を用いて上記同様に機能的にCYBB遺伝子上流の転写調節領域を解析した結果、本遺伝子の転写活性を著しく上昇させる正の転写調節部位が見いだされた。また、本調節部位は好酸球以外のCYBB遺伝子発現細胞種では働かなかった事から、好酸球特異的なCYBB遺伝子発現促進機構に関与していると考えられる。さらに本配列に結合する転写因子の解析を上記同様に行い、それら因子の同定にも成功した。現在本研究成果の論文発表の準備を行うと共に、その詳細な分子機構の解析を進めている。
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