Sandhoff病マウスを用い、A)マウスの形態的評価 B)病態生理、特にアポトーシスとの関連性 C)遺伝子導入法による点鼻治療の可能性を追求した。 結果: A. 病理学的解析;神経系や肝、脾、腎は勿論の事であるが、その他、生殖器系(精巣上体、精嚢、子宮) 膵臓、唾液腺でライソゾーム腫大によると思われる細胞腫大を伴っていた。これらの意義については未知である。 B. 病態解明(アポトーシス);ISEL法を試みたが核よりも細胞質に良く染まると言う不思議な結果を得た(現在、追試中)。ラダーの検出を試みたが検出できなかった。更にアポトーシスに関与するとされるcaspase 3、Bcl2、Bax、BclX、p53を抗体を用いて染めてみたがコントロールと有為に差を認めたものはなかった。現在、抗体の種特異性について検討中であるが、マウスの神経障害にアポトーシスはあまり関与していない可能性がある。 C. 遺伝子治療の評価;酵素組織化学的方法を用いてヘキソサミニダーゼを染める系を確立し、点鼻による発現検出を試みたが酵素活性を持つ細胞は認められなかった。これはベクターのプロモーターが弱いことによる可能性及び検出系の感度が低い可能性がある。 D. その他; 1) Tay-Sachs病マウスについて、表現型の観察、病理学的解析を行った。マウスは神経障害に関連した筋力低下によると思われる独特の姿勢、尾を持ち上げた時の四肢を屈曲する反射を認めた。病理学的にはPAS染色で蓄積範囲を見た結果、若年マウスでは見られなかった小脳の顆粒層や分子層の細胞にも蓄積が見られた。 2) 阪大理学部の長谷教授らと共同でこれらのマウスとある脳特異的糖鎖との関連性について検討し、ヘキソサミニダーゼBの関与を認めた。(J.Biochem.発表予定)
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