研究概要 |
これまで赤痢アメーバ(Entamoeba histolytica)の病原性に関与すると考えられている因子は複数が報告されている。我々は、既に遺伝子情報の明らかにされた因子のin vivoでの機能を解析するために、E,histolytica及び非病原性のE.disparにこれらの遺伝子を導入し、強制発現させ、発現型の変化を検討する系を作成することを目的とした。E.histolyticaへの遺伝子導入にはエレクトロポレーションよりも、リポフェクタミンを用いたリポフェクションが優れた導入効率を示した。導入した遺伝子としては、細胞接着に関与することが示されているガラクトース阻害性レクチン(HGL5)、システイン代謝に関与するシステイン合成酵素(CS)、及びコントロールとして蛍のルシフェラーゼ(LUC)を用いた。CS及びLUCは過剰発現が達成されたが、HGL5の過剰発現は見られなかった。その理由は不明であった。CSを過剰発現したアメーバ株は過酸化水素などの酸化物に対して低い程度ながら耐性を示した。この結果は赤痢アメーバにおいて、システイン合成経路が抗酸素機能をもつことを直接的に示したものであった。E.disparへの導入は多くの種類のイオン性・非イオン性リポソームを試みたが、効率的に導入できる商業的担体はなく、E.disparに適合する脂質の種類、特にコレステロールなどの割合を至適化することが必要であると思われる。
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