今年度は緑膿菌サイトトキシン(CTX)受容体分子の単離・精製を行うことを目標に以下の実験を行った。 1.非活性型前駆体毒素の性状解析より前駆体毒素は結合能を有することが明らかとなった。 2.化学架橋剤によってCTXと結合する分子を同定することを試みたが、現在のところ成功に至っていない。さらに化学架橋剤および標的細胞膜の可溶化剤の選択に検討を要するものと思われた。 3.ECL法を用いたサンドウィチウエスタン法によってCTXと結合する分子を同定することを試みたが、十分な成果は得られなかった。そこで、CTXのN末端アミノ基に蛍光分子を付与し特異性および感度を向上させることを試みたがN末端への蛍光分子を付与により結合能が低下することが見い出された。このことはCTXのN末端が結合に重要な領域である可能性を示すものである。 4.PI-PLCによって標的細胞を処理することにより、CTXに対する感受性が低下することが見い出された。この時CTXの結合量は人工脂質膜に対するものと同程度まで低下していたため、CTXは、GPI分子でアンカリングしている膜蛋白を介して標的細胞膜へ結合していることを示唆するものと思われた。PI-PLCによって膜から遊離した蛋白質にターゲットを絞ることにより、当初計画していた標的細胞膜の可溶化の段階を経ずに解析が進められる可能性が存在する。 5.結合能を失った変異毒素を作成し、解析のコントロールに使用することが結合蛋白の同定に重要であると考えられる。そこでPCRによるランダム変異法で変異毒素を得るためのスクリーニング法を確立した。
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