研究概要 |
ボツリヌスC型progenitor toxinを培養液より精製し、アルカリ処理した後、陰イオン交換カラムにより、無毒成分(NTNHとHAコンポーネントの複合体)を分離精製した。またHAコンポーネントの4つのサブコンポーネント(HA1,HA2,HA3a,HA3b)をそれぞれ、グルタチオンSトランスフェラーゼ(GST)との融合蛋白質として、大腸菌を用いて大量に発現し、精製することに成功した。そこでこの4つのサブコンポーネントの内、どれが小腸微絨毛あるいは赤血球との接着に関与しているのかを検討した。まずマイクロタイタ-プレートを用いて、各リコンビナント蛋白質の赤血球結合活性が測定した結果、HA1,HA3b,及びHA3にnative16Sprogenitor toxinと同様の強い結合活性が見られた。またモルモット小腸切片を用いた実験より、やはりHA1,HA3b,及びHA3(HA3aとHA3bの前駆体蛋白質)に微絨毛への結合活性があることが明らかとなった。 次にC型無毒成分ワクチンと混合HAリコンビナントワクチン(GST-HA1,-HA2,及び-HA3)の経鼻接種の効果を、以下のようにして比較検討した。両者とも大腸菌のLTの変異体をアジュバントとして、マウスに経鼻接種(1週間毎に5回)し、3週間後にC型(C-ST)D型(CB-16)の16S progenitor toxinをそれぞれ1x10^4MLDずつ混合した毒素溶液をゾンデにて胃内に投与した。その結果、無毒成分ワクチンは完全に毒素活性を抑制しマウスは無症状であった。一方、混合HAリコンビナントワクチン投与群は、アジュバントの投与のみのコントロールマウスより、ボツリヌス症発症の時期は1〜2日ほど遅くなったが、最終的には死亡した。以上の結果より、混合HAリコンビナントワクチンの効果は弱く、不充分であると判定された。今後は神経毒素の重鎖のリコンビナント蛋白質を加えることなどの改良を行う予定である。
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