In vivoおよびIn vitroの細胞障害実験によるH.pylori病態研究

1997 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 09770181
• 研究機関: 岡山大学
• 研究代表者: 横田 憲治 岡山大学, 医学部, 助手 (00243460)
• キーワード: Helicobacter pylori / 動物実験 / MALT lymphoma / 熱ショック蛋白

研究概要

我々は、MALTリンパ腫患者(胃粘膜内に起こる、H.pylori反応性リンパ球の腫瘍と考えられている)の末梢血単核球を、SDID(severe combined immunodeficient)マウスに移植したSCID-huマウス(ヒトの免疫系を免疫不全マウス内に再現したもの)を作成し、このマウスの胃内に菌を経口投与すると、出血を伴う胃潰瘍が発生することを見いだした。これら胃潰瘍を発症したマウスでは、脾臓細胞のFACScan解析によりヒトリンパ球が確認され、移植されたヒトリンパ球がH.pylori抗原に反応し幼若化をきたすこと、および抗H.pyloriヒトIgG抗体価が上昇していることを認めた。さらに、これらのマウスには、胃上皮細胞にたいする自己抗体が存在することが判明した。(論文準備中)
MALTリンパ腫患者の手術標本および血清抗体を調べたところ、MALTリンパ腫患者の胃粘膜のリンパ濾胞中心に存在する、follicular dendritic cell(FDC:抗原提示細胞)がHSP60を発現している事。患者血清中にHSP60にたいする自己抗体が、存在することを認めた。(論文準備中)
動物実験では、BALB/c、C3H、C57BL/6などのマウスに菌を投与すると、マウス系統により感染に対する反応が異なることを認めた。BALB/cマウスでは菌を感染させ、長期(6ヶ月)観察すると血中抗体価は上昇するが、ほとんど胃炎は起こらない。しかしC3H、C57BL/6マウスでは、抗体価の上昇も認められ、感染後1〜3ヶ月で胃炎を発症してくる。更に、それらマウスのサイトカインの傾向から、BALB/cマウスではTh-2反応のみが有意であり、C3H、C57BL/6ではTh-2反応に加え、Th-1反応も現れている事をみとめた。

研究成果

• [文献書誌] Yokota, K., et al.: "IgA protease produced by Streptococcussanguis and antibody production against IgA protease in patients with Behcet's disease" Microbiol.Immunol.41・12. 925-031 (1997)
• [文献書誌] Kobayashi, K., et al.: "Detection of the heat shock protein on the follicular dendritic cells in the germinal centres of low grade B cell gastric lymphoma of mucosa-associated lymphoid tissue (MALT) type." J.Clin.Pathology. (in press).
• [文献書誌] Day, A., et al.: "Antibody and cytokine responses of three mouse strains infected with Helicobacter pylori." Acta Media Okayama. (in press).
• [文献書誌] 横田憲治, 他: "H.pyloriに対する免疫応答とMALTリンパ腫" 胃と腸. (in press).
• [文献書誌] 平井義一, 他: "Helicobacter pylori." BIO Clinica.12・14. 1039-1043 (1997)
• [文献書誌] 小熊惠二, 他: "Helicobacter pyloriのワクチン療法" 診断と治療. 86・1. 89-94 (1997)
• [文献書誌] 平井義一, 他: "ウイルス・細菌感染症newファイル(実験医学別冊メディカル用語ライブラリー)" 永井美之,渡邊治雄, 243 (1997)