研究概要 |
Bacteroides fragilis は臨床検体より頻繁に分離される偏性嫌気性グラム陰性桿菌であり、特に本菌による敗血症は致命率が高い。Bacteroides fragilisの病原因子のーつとして考えられているノイラミニダーゼ遺伝子nanHの下流にはシアル酸の代謝に関与するsia1icacid permiase や lyase遺伝子の存在が推測されているがその証明は未だなされていない。本研究ではnanH遺伝子の下流にシアル酸代謝に関与する遺伝子群が存在するか否かを調べた。 既にクローン化しているnanH遺伝子を含む約5.4kbのDNA断片からnanH遺伝子の下流約2.8kbの領域をpBluescript II KS+にサブクローニングし、塩基配列を決定した。さらにその下流領域は、上記決定配列の一部を用いて増幅したinverse PCR産物をpT7blueにクローニング後、塩基配列を決定した。nanH遺伝子下流8,170bpのDNA断片中には、4つのORFと、3′側が中断された5番目のORFが存在した。ORF1,とORF5から予想されるアミノ酸配列は共にPorphyromonas gingivalisのβ-N-acetylhexosaminidaseと高いホモロジーを示した。ORF2がコードし得る220アミノ酸配列は、ウシのplatelet-activating factor acethylhydrolase Ibのa sununitやE.coliのthioesterase Iなどのesterase類と相同性が認められた(それぞれ 29.0% および30.6%の相同性)。ORF3から予想される690アミノ酸配列は、N末端領域(220残基)においてVibrio mimicus arylesteraseと、またC末端領域(470残基)においてマウスのsialate9-O-acetylesteraseとそれぞれ25.5%および29.2%の相同性が認められた。またORF4は856アミノ酸残基をコードし得ると予測され、相同性検索の結果ヤギのβ-mannosidaseと29.2%の相同性を示した。以上よりnanH遺伝子下流には糖鎖分解に関与する遺伝子群がクラスターを形成している可能性が示唆された。
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