毒素原性大腸菌の産正する耐熱性エンテロトキシン(STa)は、腸管上皮細胞膜上に存在する受容体蛋白質(STaR/GC-C)に特異的に結合して、ヒトや家畜に急性の下痢を引き起こす毒素である。他のほ乳類の膜結合型グアニル酸シクラーゼと比べて、STaRはグアニル酸シクラーゼ領域より下流のC端末領域が他の膜結合型グアニル酸シクラーゼより長いといった構造上の特徴を持っている。STaRは、NPR-A(GC-A)もしくはNPR-B(GC-B)と比べてC末端領域が約60アミノ酸長く、GC-D、retGC1(GC-E)もしくはretGC2(GC-F)と比べてもC末端領域が約30アミノ酸長いといった特徴が認められる。この特徴あるSTaRのC末端領域の1029残基めのセリンがプロテインキナーゼCによりリン酸化を受けることを今までに我々が明らかにしてきた。 本研究では、STaRの特徴あるC末端領域の役割を明らかにする為に、STaRのC末端を欠損させたSTaR異変体、つまり1015残基めのグルタミンから1050残基めのフェニルアラニンまで欠損させたC△1015を作製した。このC△1015を1μMSTaにて10分間刺激した結果、wild-typeのSTaRと比べて約20倍高い細胞内のcGMP濃度上昇が認められた。しかしながら、wild-typeのSTaRとC△1015の蛋白質の発現量およびSTa結合活性に違いは認められなかった。この結果から、STaRのC末端領域はグアニル酸シクアラーゼ活性に抑制的に働いていて、このC末端領域を欠損させたC△1015はグアニル酸シクラーゼ活性の抑制効果から解放されて高いグアニル酸シクラーゼ活性が引き起こされると考えられた。
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