研究概要 |
1.CFA/III遺伝子群(cofオペロン)の遺伝学的同定 ヒト由来毒素原性大腸菌(enterotoxigenic Escherichia coli:以下ETECと省略する)が産生する線毛性定着因子CFA/IIIの構築に関与する遺伝子群(以下cofオペロンと省略する)領域を約14.2kbまでに限定し,その全塩基配列を決定した。cofオペロンは,合計14個の遺伝子(オープンリーディングフレーム:以下ORFと省略する)から構成され,既知のmajor pilin (cofA)の上流にはpapB(P線毛の発現調節)およびrns(CFA/IIの発現調節)と,下流にはコレラ菌の定着因子の一つと考えられているTcp線毛のtcpB(minor pilin),tcpQ(機能不明),tcpC(外膜リポタンパク),tcpT(内膜ATPase),tcpE(内膜タンパク),tcpJ(prepilin peptidase)とそれぞれ相同性があるORFが存在していた。また,cofオペロンとtcpオペロンが互いに各遺伝子の大きさと配置が似ており,両者が共通の祖先を持っていた可能性が考えられた。 2.生菌ワクチン候補株の作製 cofオペロン(約13.8kb)を非病原性大腸菌(大腸菌HB101)へクローン化を行ったところ,菌体表面上にCFA/III線毛の発現が認められ,且つ,CFA/III産生性ETECと同様に培養細胞Caco-2(大腸癌由来細胞)への付着を示した。
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