0139コレラ菌の菌体DNAをSau3AIで部分消化した後コスミドライブラリーを作成し、0139コレラ菌の特異DNAプローブと反応するクローンを3つ得た。それらのDNA塩基配列を解析したところ約36.5kbの領域に31個のORFが存在した。31個のORFの中でORF14〜ORF21のGC含量は29-35%と他の領域と比べてGC含量が低く、しかもコレラ菌の平均GC含量(47-48%)よりもかなり低いことがわかった。ORF13は、0139コレラ菌に特異的な糖鎖であるコリトースの中間体の合成酵素と相同性が見つかった。また、ORF17は、ある種のバクテリオファージのインテグレースと部分的に相同性のあることから0139特異0抗原遺伝子は、ある種のファージを介して構築された可能性が考えられた。さらに、0139特異0抗原合成遺伝子の由来を調べるために、0139特異0抗原合成遺伝子の01〜0155までの血清型との反応性を調べた。その結果、0139特異0抗原合成遺伝子領域は、01とnon-01と反応するA領域、ある種のnon-01と反応するB領域、022と0139とだけに特異的に反応するC領域、0139に特異的に反応するD領域さらに0139と多くのnon-01と反応するE領域の5つに分けることができた。しかも、GC含量の低かった領域は0139に特異的であったD領域と一致していた。この結果から、0139特異0抗原合成遺伝子領域は022の0抗原合成遺伝子にD領域の特異的なDNAが何らかの機構で挿入されて構築され、さらに0139特異0抗原合成遺伝子領域が流行性の01 E1 Torコレラ菌に挿入されて流行性の新型コレラ菌0139が派生した可能性が考えられた。今後、022の抗原合成遺伝子についても解析を行い、0139コレラ菌の起源ならびに派生機構について、詳細な検討を加えていく予定である。
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