単純ヘルペスウイルス(HSV)のコードするUL13プロテインキナーゼ(PK)はカゼインのような酸性蛋白質を良くリン酸化し、細胞質よりも核に多く局在することがわかった。また、HSV-2の方がHSV-1に比べ10倍程度PK活性の誘導が高いため、HSV-2感染Vero細胞の核画分からUL13PKを精製した。精製したUL13PKについて至適反応条件、阻害物質、基質特異性について検討した。HSV-1 UL13を制限酵素サイトをもつprimerを用いてPCRを行い、pET-28発現ベクターでUL13の発現系を作製した。大腸菌で発現させたUL13産物を精製し、ウサギに免疫して抗体を作製した。この抗体を用いて精製UL13プロテインキナーゼをWestern blottingで確認した。またHSV-2 UL13の全塩基配列を決定した。 精製HSV-2 UL13PKは銀染色で57Kの単一バンドで、Western blottingでも反応性を確認した。このPKはHSV-1 UL13 PKと異なり塩濃度に感受性で、ヘパリンに対する感受性は宿主のカゼインキナーゼI、IIに比べてより抵抗性であった。基質特異性、並びにカゼインキナーゼに対する阻害物質の結果から、HSV-2 UL13PKはカゼインキナーゼIIよりもむしろカゼインキナーゼIに類似した性状を示したが、宿主のカゼインキナーゼとは異なる独白のプロテインキナーゼであることがわかった。
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