HHV-8はEBウイルス(EBV)と同様、ガンマヘルペスウイルス亜科に分類され、新しい発癌因子としての可能性が示唆されている。昨年我々は、HHV-8は日本人からも検出され、カポジ肉腫以外の増殖性皮膚疾患とも関連性を示すことを報告した。今回はタイ国の免疫不全ウイルス(HIV)感染者、特に皮膚疾患を伴うHIVキャリアーに注目し、それら患者でのHHV-8の動態に関して解析を行い、HHV-8の病原性について検討を行った。[材料と方法]タイ国の皮膚疾患を伴わないHIVキャリアー27名、各種皮膚疾患を伴うHIVキャリアー60名、健常人19名より末梢血を採取し、血漿と単核球を分離した。血漿中の抗HHV-8抗体価はHHV-8感染B細胞株(BCBL-1)を用いた間接蛍光抗体法にて、単核球からはPCR法によるHHV-8DNAの検出を行った。さらにHHV-8抗体陽性血漿については免疫沈降法にて、認識するHHV-8特異抗原の同定を試みた。またHHV-8抗体とEBV抗体の交差反応性を検討するため、EBV抗代価の測定、EBV抗原との免疫沈降法も行った。結果、皮膚疾患を伴わないHIVキャリアーや健常人からはHHV-8 DNAが検出されなかったが、皮膚疾患を伴うHIVキャリアー2/60名(3.3%)からはウイルスDNAが検出された。抗HHV-8抗体は皮膚疾患を伴わないHIVキャリアーの2/27名(7.4%)、皮膚疾患を伴うHIVキャリアーの15/60名(25%)から検出され、皮膚疾患を伴うHIVキャリアー群の方が抗HHV-8抗体陽性率が高かった。一方、健常人からの抗体検出は認められなかった。さらに抗HHV-8抗体陽性/陰性血漿とHHV-8感染/非感染細胞のlysateを用いた免疫沈降法にて、HHV-8抗体陽性患者血清中には約40KDと36-38KDのHHV-8特異的蛋白を認識する抗体が存在することが示された。以上の結果から、タイ国のHIV感染者においてもHHV-8感染が認められ、HIVキャリアーにおける皮膚疾患の発症にHHV-8が何らかの関連性を示す可能性が示唆された。
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