研究概要 |
ADAM(A Disintegrin And Metalloproteinase)はヘビ毒メタロプロテアーゼおよびディスインテグリン群と相同性を示す新しい遺伝子群の総称である。我々は最近、癌悪液質誘導性のマウスcolon26腫瘍が発現するADAMTS-1という新しいADAMファミリー遺伝子を同定し(Kuno K.et al.,1997)、その解析を行っている。ADAMTS-1は膜貫通領域を持たず、そのかわりに3つのトロンボスポンジン(TSP)タイプIモチーフを有する新しいタイプのADAMファミリー分子である。我々は同遺伝子欠損マウスの作製と解析に先立ち、マウスADAMTS・1染色体遺伝子の構造を解析した。マウスFIX・II genomic libraryのスクリーニングを行ない3つのgenomic cloneを得た後、そのDNA塩基配列を決定した。その結果、マウスADAMTS-1遺伝子は全長9.2kbで9つのエクソンから成ることがわかった。またプロプロティン、ディスインテグリン様ドメインおよび中央部TSPタイプIモチーフは、それぞれ単一のエクソンにコードされていることから、いくつかのエクソンは機能ドメインに対応することがわかった。これまでADAMファミリーでは、MDC及びMS2遺伝子についてその染色体遺伝子構造が調べられており、いずれも二十数個の短いエクソンからなることが報告されている。ADAMTS-1染色体遺伝子の構造はこれらのものとはかなり異なることから、ADAMTS-1は同ファミリーの中でもすこし離れた遺伝子であると推定される。またFISH法により同遺伝子の染色体マッピングを行った結果、ADAMTS-1遺伝子はマウス染色体16番C3-C5の領域にマップされることがわかった。現在のところ、同領域には他のADAMファミリー遺伝子はマップされておらず、また他のグループの報告からも、ADAMファミリー遺伝子群は同一染色体上でクラスターを形成していないと思われる。
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