未分化多能性幹細胞(ES細胞)から細胞外基質蛋白でコートしたシャーレを利用することによりFlk-1(fetal liver kinase-1)陽性の血液細胞、血管内皮細胞を誘導する実験系を開発した。この系において、BMP(骨形成因子)が細胞増殖を阻害し、分化誘導を制御する事を見いだした。 マウスの胚盤様上皮細胞(epiblast)は、多能性を有する細胞群であるが、胚性7.5日以降では、すでに神経系細胞系譜に系列が決定されており、正常では中胚葉系列の細胞を形成することはない。この系において、TGFβファミリーの1つであるアクチビンが、Flk-1陽性の中胚葉系細胞を誘導できることを明らかにした。このことは、アクチビンという中胚葉誘導因子がマウスの多分化能を有する細胞群の細胞の系譜を変化させうる作用を持つことを示している。 アクチビンの受容体型セリンキナーゼを介した細胞内情報伝達機構を解析する中で、TGFβ群の抑制性の細胞内因子、Smad7がアクチビンの作用を強力に負に制御することを見いだした。また、正のシグナル分子であるSmad2およびSmad3とロイシンジッパー型転写因子であるjunファミリーが会合し、情報伝達を制御していることを明らかにした。 アクチビンタイプII受容体型セリンキナーゼのカルボキシル末端と会合する数種のPDZ蛋白質を見いだした。これらの分子群は、神経系細胞での、受容体の局在化、情報伝達因子のクラスター化、制御を担っている可能性があり、現在詳細な解析を行っている。
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