研究概要 |
リンパ組織の発生に関わる遺伝子を同定することを目的とし、本年度はリンパ節ストロマ細胞のうちリンパ球を選択的に結合し、血管系からリンパ節へ移行させるHigh Endothelial Venule(HEV)に焦点をしぼり、その形質を遺伝子発現パターンとして把握することを試みた。 【1】MECA-79^+HEVの精製および3'末端特異的cDNAライブラリの作製と塩基配列の決定 酵素消化により得たマウスリンパ節ストロマ細胞画分から、末梢リンパ節HEV特異的抗体MECA-79を用いた磁気ビーズ法により約90%の純度でHEV細胞を精製し、mRNAを調整した。Qkuboらの方法に準じて3'末端特異的cDNAライブラリを作製し、1,658クロンの塩基配列を無作為に決定した。塩基配列の相互比較と出現頻度解析から遺伝子発現プロフィルを得た。1,658クロンは763種類の遺伝子に分類され、このうち455種が新規遺伝子であることが示された。 【2】HEV特異的遺伝子の探索 上記の遺伝子発現プロフィルとCD31^+血管内皮細胞やCD4^+T細胞およびB220^+B細胞などの遺伝子発現プロフィルとの比較を通じて、MECA-79^+HEVに特異的に発現する215種の遺伝子を同定した。データベース検索の結果、このうち171種は新規遺伝子であった。また、HEV特異的に発現する既知遺伝子には細胞の接着や運動および炎症に関連した分子群が見い出された。新規分子についてはdbESTおよびTIGRのデータベース検索を通じて、5'端配列の取得を試みており、von Willebrand factorやtype XV collagenなどに関連する分子群を見い出しつつある。これらについては別に作製したcDNAライブラリを用いて、全長を含むcDNAクローンの単離を試みている。
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