研究概要 |
ヒトγδ型T細胞樹立株からmRNAを調製し、cDNAを合成後、PCRによりγ鎖およびδ鎖をクローニングした。さらにそれらの遺伝子をpEF-BOSベクターに組み込み、TCR欠損型Jurkat細胞に導入した。この際、マーカーとしてpST-NeoBを用い、ジェネテイシンに対する耐性を指標とした。960μF、250Vの条件においてエレクトロポレーションを行った結果、高い効率でγδ型TCRを表現するJurkat細胞を得ることができた。約50株のトランスフェクタント細胞を得たのち、CD3分子からのシグナル伝達を確認したところ、5株が強いシグナル伝達能を有することが明らかとなった。これらの細胞株を用い、ピロリン酸モノエステル系抗原認識におけるTCR依存性を確認した。現在にまでに明らかとなっている合成抗原であるモノエチルビロリン酸のほかに、今回新たに合成された高活性型抗原である、2-メチル-3-ブテニル-1-ピロリン酸を作用させ、IL-2の産生によりTCR依存性を確認した。以上の実験を独立に5回繰り返し検討した結果、いずれも同等の頻度で、細胞内シグナル伝達能を有する株が得られた。 以上の結果より、ピロリン酸モノエステル系抗原の認識機構におけるTCR依存性が明らかとなった。またこれまでに点突然変異を導入した遺伝子のコンストラクトが得られているので、この系を用いることによりTCR鎖のいずれのアミノ酸残基が認識に関わっているか、検討することが可能になった。また、本年度までの研究において、TCRの細胞質および細胞膜領域を欠失させたコンストラクトを作成したので,Jurkat細胞に導入後、可溶性型のTCRを用いて、ビロリン酸モノエステル系抗原とTCRとの相互作用が解析可能になった。
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