研究概要 |
近年私たちは、末梢においてNK活性を欠損する新規変異マウスC57BL/6nkd/nkd(以下nkdマウスと省略)を見いだした。本研究ではnkdマウスの免疫系の解析およびNK細胞の標的認識機構について解析を行った。nkdマウスは、脾臓および胸腺においてNK1.1、IL-2Rβ両陽性細胞が欠損し、YAC-1細胞を標的とした細胞傷害活性も認められなかった。Thy-1^+dec、γδT細胞、および他の主要なリンパ球サブセットには異常は認められないことから、nkdマウスではNK細胞に限局した分化異常が存在すると考えられた。さらに詳細にフローサイトメトリー解析を行った結果、CD2,FcgRII/III,2B4(anti-NK),Dx5(anti-NK)陽性のNK細胞系列と考えられる細胞種は存在することが明らかになった。しかしながら、これらの細胞種には、NK細胞の標的認識に必須であるNKレセプターであるNK1.1,Ly49A,Ly49C/Iの発現が認めらなかった。興味深いことは、nkdマウスの脾細胞はIL-2刺激により細胞傷害活性を獲得し、その際の標的識別は、NKレセプターが発現していないにもかかわらずMHCクラスIに依存していた。以上の結果は(1)NK細胞の初期分化にNK1.1,Ly49A,Ly49C/Iは必須ではないこと、(2)IL-2刺激によって誘導される細胞傷害活性にNK1.1,Ly49A,Ly49C/Iは必須でないこと、(3)NK細胞のMHCクラスI依存的細胞傷害活性には、未知のレセプターが関与すること、を示唆している。現在このレセプターに対する抗体を作製し、性状解析を進めている。
|