マウスTL抗原は非古典的MHCクラスI分子群に属し、すべてのマウスの腸上皮と特定のマウス(A系やBALB/c)の胸腺T細胞に発現する。しかし正常胸腺には孔抗原を発現しないマウス(B6やC3H)でも、Tリンパ腫の発生に伴いTL抗原を発現することから、TL抗原は腫瘍特異抗原と考えることができる。 TL拘束性のTCRαβ型CTLクローンを樹立して、その標的細胞特異性を検索したところ、TL陽性細胞すべてを傷害するもの(Type I)とTL陽性Con A blastのみを傷害するもの(Type II)の2種類に大別された。Con A blastとその他のTL陽性標的細胞の表面抗原を検索した結果、Con A blast がFas陽性であったのに対し、他の標的細胞はFas陰性であった。さらに両CTL群の性格を比較した結果、(1)Type Iの傷害性がPerforin依存性であるのに対し、Type IIの傷害性はFasLおよびPerforin双方によること、(2)Type IIはType Iと同程度のPerforinを発現しているにも拘らず、その放出能はType Iに比べて非常に弱く、TCR/CD3を介したシグナルに加えてCon A blast上に発現する補助分子との相互作用が必要であること、(3)Con A blast以外のTL陽性標的細胞はType IIを刺激してFasLの発現を誘導するが自身がFas陰性であるため傷害されないことが明らかとなった。 また、Type IあるいはBulk CTLを養子移入することによってTL陽性T細胞の増殖抑制が観察され、TL抗原を標的とした腫瘍の養子免疫療法モデルを確立することができた。
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