(研究の目的)我々は、肥満を伴わず、若年より高血糖を呈する糖尿病マウスをC57BL/6L系統で発見し、確立した。本マウスの糖尿病は常染色体優性遺伝形式をとる単一遺伝子疾患であり、マウス染色体7番に存在し遺伝子座をMody4と命名した。本マウスは膵β細胞の機能不全と低インスリン血症を特徴としている。我々は、本マウスの糖尿病が膵β細胞の機能不全および分裂、増殖能に関わっていると予想し、糖尿病成因遺伝子座のヘテロおよびホモ接合体マウスの膵ラ氏島細胞のインスリン生合成機能および分裂、増殖機構を検討した。 (方法)生後1日、2週齢の糖尿病成因遺伝子座のヘテロおよびホモ接合体マウスの膵ラ氏島細胞を抗インスリン抗体および抗グルカゴン抗体で染色し、また膵ラ氏島細胞の微細構造を電顕を用いて検討した。また、抗BrdU抗体を用いて、膵ラ氏島細胞の分裂、増殖能を検討した。 (結果および考察)ヘテロ接合体に比べてホモ接合体マウスのインスリン染色は生後1日、2週齢ともに減少している。また、グルカゴン染色に変化は見られなかった。電顕では、2週齢のホモ接合体マウスの膵β細胞の矮小化、分泌顆粒の減少および粗面小胞体の増生、ミトコンドリアの膨張、内膜の不規則な配列変化が見られた。2週齢のヘテロ接合体マウスの膵β細胞では、ホモ接合体に比べて多くの粗面小胞体の増生、不規則な配列の変化が見られた。また、膵α細胞に変化は見られなかった。抗BrdU抗体染色においてヘテロ接合体マウスの膵β細胞は分裂、増殖能が低下、減少していることがわかった。これらのことから本マウスの糖尿病は膵β細胞に特異的な成因によるものであり、老化による糖尿病発症のメカニズムの解明および予防に役立つと考えている。
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