製造工程に従事する男性従業員124名を対象とし、勤務態様の差異と精神的身体的健康度との関連について、自記式質問票による調査を行った。質問票は、General Health Questionnare-28、Health Practice Index(HPI)、ワークストレッサー・チェックリスト(WSC)を用いた。その後、3組3交代制の男性勤務者9名を対象とし交代制勤務に対する自律神経機能の推移をみるために、連続する5日間の夜勤の第2、4日目および昼勤の第3日目に携帯型自動血圧心拍計を用いて、血圧・心拍のデータを測定した。また同時に自覚症状・睡眠感(OSA睡眠調査票)の調査を行った。 結果;WSCについては二群間に有意差を認めなかった。HPIについては朝食摂取・間食の有無・栄養バランスの項目について常日勤者群の方が良い生活習慣を持っていた。GHQについては総得点と、4つのサブスケールのうち、身体的症状・うつ状態に関して交代制勤務者群の方が精神身体的健康度は良好であった。心拍モニタリングの結果では、勤務中には交感神経の活動指標であるLF/HF値が、睡眠中には副文感神経活動の指標であるHF値が優位であった。睡眠中のHF値について見ると、HF値は夜勤第2日目は昼勤第3日目に比して有意に低く、第4日目になると昼勤時と同じ程度まで上昇してくること、その回復率は個人によって差があることが明らかになった。睡眠時間・自覚症状数には有意差がなかった。睡眠感の調査では夜勤2日目に比して4日目で睡眠感の改善が見られた。以上より交代制勤務者のGHQが従来言われているよりも低く、精神身体的健康度は交代制勤務者の方が良好であった。交代制勤務という勤務態様への「慣れ」の問題や、日勤帯と夜勤帯における労働環境などの諸要因についても、GHQに影響を与える要因として考慮する必要性があると考えられた。夜勤時の自律神経活動の指標の変動は2日目よりも4日目の方がHF値が上昇していた。さらに夜勤4日目では昼勤3日目と同程度まで上昇していることから、夜勤に対する経時的な生体の適応が存在すると推測された。
|