研究概要 |
本研究ではわが国における腸球菌の薬剤耐性化の現状を把握し、また遺伝学的タイピング法を確立するため、平成9年1月より札幌医科大学附属病院検査部で分離された腸球菌を対象として解析を行なっている。現在までに192株が得られ、そのうちE.faecalis 51株、E.faecium 22株について詳しい解析を行なった。その結果は以下の通りである。 1.バンコマイシン耐性株は検出されなかったが、腸球菌において院内感染対策上問題となるペニシリン耐性株、ゲンタマイシン(GM)高度耐性株の存在が明らかとなった。ペニシリン耐性株はE.faeciumにおいてのみ見られ、半数以上はABPCに対するMICが32μg/ml以上の高度耐性を示した。しかし、βラクタマーゼは検出されなかった。一方GM高度耐性株(MIC≧500μg/ml)はE.faecalisの一部に見られ、E.faeciumでは中等度耐性株が約半数を占めた。 2.GMを含むアミノグリコシド(AG)耐性を規定するAG修飾酵素遺伝子の分布をPCR法により調査した。GM高度耐性に関与するとされるAAC(6')/APH(2")は、E.faecalis、E.faeciumにおいてそれぞれ29.4%、13.6%の株が、APH(3')はそれぞれ31.4%、54.5%の株が保有していることが判明した。 3.パルスフィールド電気泳動法による制限酵素切断パターン解析、AP-PCR法により、E.faecalis,E.faeciumはそれぞれ23、8種類のgenotypeに分類することができた。またリボゾーム遺伝子間配列に基づくPCRは菌種の弁別に有効であった。現在さらに多数の菌種、菌株を用いてこれらの有用性を検討している。
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