亜鉛欠乏では記憶障害や摂食行動に異常の見られることが知られており、これらの異常の発現に交換性亜鉛プールの減少が関与している可能性がある。今年度は基礎的な実験系の作製を試みた。 正常飼料としてAIN-93Gの処方を用い、それから亜鉛を除いたものを亜鉛欠乏飼料とした。体重約90gの雄のウイスター系ラットを3群に分け、亜鉛欠乏飼料摂取群群には亜鉛欠乏飼料を自由摂取させ、ペアフィーディング群は亜鉛欠乏群が前日に摂取したのと同量の正常飼料を与え、正常飼料自由摂取群には正常飼料を自由摂取させた。 実験4日目より亜鉛欠乏飼料摂取群群の飼料摂取量は正常飼料摂取群より低下し、4日目以降、亜鉛欠乏飼料摂取群とペアフィーディング群の体重は正常飼料自由摂取群より低値をとった。9日目以降、亜鉛欠乏飼料摂取群の体重はペアフィーディング群より低値をとった。また4日目以降、周期約2から3日の周期的な摂食量と体重増加量の変化が認められた。亜鉛欠乏飼料摂取群には著しいやせが認められた。 胸腺の比体重は亜鉛欠乏飼料摂取群、ペアフィーディング群、正常飼料自由摂取群の順に大きくなった。ヘマトクリット値、赤血球数は亜鉛欠乏飼料摂取群が正常飼料自由摂取群より高かった。MCVは亜鉛欠乏飼料摂取群がペアフィーディング群および正常飼料摂取群より低値をとった。MCHCは正常飼料自由摂取群に比べて亜鉛欠乏飼料摂取群とペアフィーディング群が高値をとった。MCHには差がなかった。亜鉛欠乏飼料摂取群の血液濃縮が示唆された。 肝臓中アルカリホスファターゼおよび酸性ホスファターゼ活性は、正常飼料自由摂取群に比べて亜鉛欠乏飼料摂取群とペアフィーディング群が低値をとった。血漿亜鉛は亜鉛欠乏飼料摂取群が他の2群より低値をとった。 次年度では作製できた亜鉛欠乏ラットを用いて交換性亜鉛プールの変化を検討する予定である。
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