研究概要 |
本研究では、高齢者の生活様式が健康事象に及ぼす影響が、時代が進むにつれて、また出生コホートが新しくなるにつれて、どのように変化するかを考察した。研究実施地は、研究者らが、1982年と1992年に、65歳以上在宅高齢者を対象として、健康と生活に関する悉皆質問紙調査を実施した高知県大方町である。1982年調査の回答者1,531名(以下、1982年コホート)と、1992年調査の回答者2,230名(以下、1992年コホート)を、それぞれ5年間追跡した。とりあげた健康事象は、5年間の死亡と、5年後の日常生活動作能力障害(以下、ADL)である。今年度は5年間の死亡について解析した。人口動態死亡小票を用いて同定した死亡者数は、1982年コホートで272名、1992年コホートで263名であった。生活様式要因として、保健習慣5要素(喫煙、飲酒、食事規則性、便通規則性、睡眠時間)のうち、健康保持に好ましい習慣が実践されている要素数(値のレンジ:0-5)と、社会的ネットワーク4要素(婚姻状況、配偶者以外の同居家族の有無、親友との交流、老人クラブ活動参加)のうち、ネットワークが緊密な要素数(値のレンジ:0-4)をとりあげた。これらと5年間の死亡との関連を、性、年齢、追跡開始時ADLを共変量とする比例ハザードモデルを当てはめて検討した。好ましい保健習慣の数は、どちらのコホートでも、死亡に関連していなかった。一方、社会的ネットワーク数が1以下の者の、3以上の者に対する死亡危険は、1982年コホートでは1.2(95%信頼区間;0.8-1.7)、1992年コホートでは1.5(95%信頼区間;1.0-2.1)であり、新しいコホートで、社会的ネットワークと死亡との関連が強まったことが示唆された。今後この変化が生じた背景について解析を進める。なお、生活様式と5年後のADLに関する検討は、1992年調査回答者の現時点でのADLを把握する質問紙調査を1998年8月に実施することになったため、来年度に行う。
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