1995年に東京都内で行った調査研究において、育児上の心理的問題の中から抽出した「育児ストレイン」の概念の構造とその規定要因についての一般化を試みるため、中小規模の1地方都市で行った質問紙調査の結果を本年度は分析・検討した。質問紙調査は、3歳以下のこどもを持つ母親450名を対象として、1998年2月5日〜3月10日に郵送法で行い、312名からの有効回答が得られた(有効回収率69.3%)。 因子分析およびCronbachの信頼性α係数により、育児上の問題の分類を行ったところ、東京都内での調査と同様、「育児不安」「児への苛立ち」「負担・犠牲感」「不満足・不全感」のサブスケールから成り、「育児ストレイン」としてまとめられる上位概念の存在が明らかとなった。また、育児ストレインが高くなると蓄積疲労徴候も高くなることが重ねて確認された。但し、サブスケールを構成する項目の幾つかが異なっているため、さらに項目を精練していく必要性が示唆された。 東京都内での調査と今回の調査に共通した項目で各サブスケールを構成して、重回帰分析によりその規定要因を検討した結果、今回は、妻の職業状態、生育家族へのイメージによる影響がみられず、十分な一般化は図れなかった。「保健医療、社会政策に望むこと」についての自由記載(149名、47.8%が回答)でも、こどもの医療費補助や児童手当の地域格差および収入制限の緩和と並んで、保育制度の充実(保育時間延長、病児保育、一時預かり等)を求める要望が圧倒的に多く、労働と健康との関連も含めた、育児ストレインの規定要因についての検討を今後も継続する予定である。
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