|
近年多くの自治体で骨粗鬆症検診が実施されるなど、骨粗鬆症に対する社会的関心はますます高まってきている。骨粗鬆症は一旦罹患すると、その低下した骨量を回復するのは大変困難なため、骨粗鬆症に進展する危険が大きいと考えられる骨量低下予備群の段階で早期発見し、骨量の喪失を予防することが必要である。しかしながら骨量低下は多くの場合無症状で進行するため、骨量低下予備群を同定するためには、一般住民を対象とした縦断調査をおこない、正常の骨量の加齢変化をまず把握することが重要となる。
申請者らは、和歌山県美山村において1988-89年に40-79歳からなる全住民を対象としてコホートを設定し、既往歴、食生活、運動習慣、飲酒喫煙状況など130項目からなるベースライン調査をおこなった。この集団から40-79歳の男女各年代50人、計400人をランダムに選び、1990年にDual energy X-ray absorptiometry(DXA)を用いて腰椎、大腿骨近位部の骨密度を測定した。さらにその追跡調査として1993年にも同様の調査をおこなってきた。今回、申請者は7年目の追跡調査として、1990年、1993年と同じDXAを用い、同対象者に対して、再度腰椎、大腿骨近位部の骨密度を測定した。
初回調査時における対象者400人のうち、7年後の調査に参加したのは338人(男159人、女179人;84.5%)であった。腰椎骨密度の平均値を性、年代別に見ると、男性では40歳代から1990年1.191g/cm^2、1997年1.196g/cm^2、50歳代1.151、1.186、60歳代1.027、1.036、70歳代1.047、1.053となり、各年代ともこの7年間でわずかではあるが増加していた。一方女性は40歳代1990年1.182g/cm^2、1997年1.121g/cm^2、50歳代0.987、0.912、60歳代0.858、0.831、70歳代0.767、0.748となり、各年代とも7年間で減少していた。これを変化率で見ると、7年間で男性は40歳代から順に0.26、2.97、0.65、0.01%の増加が認められた。一方女性では40歳代から-5.53、-7.26、-3.30、-3.07と低下しており、その低下率は50歳代で最も大きかった。
|
