国民健康保険全保険者のうち市町村保険組合の老人医療給付対象者における1人当たり費用などを1994年10月現在の時点で制定された342ヵ所の二次医療圏単位および都道府県を単位として分析した。説明変数として、産業別就業人口割合、1人当たり所得、医師数、病院一般病床数などを用いた。二次医療圏単位の情報が利用できない老人保健及び老人福祉に関する因子は都道府県単位でのみ分析した。 二次医療圏単位でみた年間の老人1人当たり医療費は入院32.1万円、入院外26.7万円であり、最大値と最小値の格差は、入院医療費3.9倍、入院外医療費2.6倍であった。入院医療費を目的変数とした重回帰分析の結果、病院一般病床数、医師数及び三次産業就業人口割合、平均世帯人員及び1人当たり所得が有意とされ、これらの5変数により、入院医療費の変動の57.4%を説明できた。入院外医療費では、病院一般病床数、一次産業就業人口割合及び平均世帯人員が有意であり、これら3変数により入院外医療費の変動の21.4%を説明できた。 都道府県単位でみた医療費の地域格差は、入院医療費2.4倍、入院外医療費2.0倍であった。重回帰分析の結果、病院一般病床数、二次及び三次産業就業人口割合、老人保健施設通所数、1人当たり所得が有意とされ、このモデルにより入院医療費の変動の85.1%が説明することができた。入院外医療費では、無床診療所数、医師数、被訪問指導実人員、特別養護老人ホーム定員及び基本健康診査受診率が有意とされた。これら5変数により入院外医療費の変動の53.4%が説明可能であった。 二次医療圏を単位とした分析は都道府県単位よりも地域格差が大きい傾向にあった。これは都道府県内格差が考慮されたためと考えられる。
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