研究概要 |
近年,骨粗鬆症の予防対策は,成長期の骨量に着目し最大骨量(peak bone mass)を介入により高めていく,より積極的な方法に焦点が移りつつある。従って,成長期の骨量評価は重要であるが,本邦では基礎的な検討が未だ十分に為されていない。既に実用化されている踵骨乾式超音波法(AOS100,アロカ社)は測定時間が短く,X線被曝のない非侵襲性であり,小児の骨量を疫学的に評価するのに適していると考えられる。しかし本測定法は,元来成人用として開発されたものであり,成人と比べ踵骨が未発達な小児に応用するためには,小児用のアダプターを新たに開発する必要がある。平成9年度は,SXA画像(UXA300,アロカ社)の解析により小児用アダプター(足の大きさ18-22cm)を新しく開発し,超音波法による成長期の小児骨量評価法を確立することができた。小児用アダプターの設計値は足底側距離27.8cm,アキレス腱側距離23.6cmが妥当と考えられた。他方,足の大きさ22cm以上の小児には成人用アダプター(22-25cm)の応用が可能と考えられた。小児用アダプターを用いたAOS100の測定精度は日内変動CV=0.27-7.07%,日差変動CV=1.33-8.77%であった。また小児用アダプターを用いたAOS100とUXA300の各指標との間には相関係数0.49-0.66の有意な(p<0.01)相関関係を認めた。 平成10年度は年齢階級毎の小児骨量(平均値,標準偏差)を明らかにし,さらに断面研究により小児骨量の関連要因を検討していく予定である。現在公立・私立の複数のフィールドで調査を既に開始している。また,この年代の骨の発育速度は大きく,短期間でも骨量の増分を評価できる可能性があるため,縦断研究による成長期の骨量増加の関連要因についても検討を試みる予定である。
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