石綿の代替品として様々な人造鉱物繊維(man-made mineral fiber:MMMF)が開発され、その生産量も急増してきている。吸入曝露された鉱物繊維の持つ生体影響を確認するために、実験動物(Wistar系雄ラット)に対して、セラミック繊維およびチタン酸繊維(チタン酸カリウムウィスカ)の長期(1年間)吸入曝露実験を実施し、曝露終了直後、終了6ケ月後、12ケ月後にラットを解剖した。肺の病理変化について。線維化と発癌性の有無を中心に検討した。その結果、セラミック繊維曝露群では肺の線維化をはじめ、曝露による影響はほとんど認められなかった。チタン酸繊維曝露群では、肺全体におけるびまん性の線維化は認められず、チタン酸繊維を貧食したマクロファージ周囲の肺胞壁に軽度の線維化を認めるのみであった。いずれの繊維の曝露においても、コントロール群に比較して有意な腫瘍の発生は認められなかった。繊維の肺からの排泄に重要な半減期に関する検討では、セラミック繊維もチタン酸繊維も、その半減期は3〜4ケ月であった。しかし、チタン酸繊維は肺内での溶解性が低いことから、マクロファージによる排泄が働きにくい長い繊維の半減期が延長することが確認された。 以上より、チタン酸繊維のように生体内での溶解性が低い人造鉱物繊維については、その取り扱いは石綿同様に充分注意する必要があると考えられた。
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